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栗原 顕輔(特任准教授(岡崎オリオンプロジェクト))(2ページ) 分子研リポート2014 | 分子科学研究所

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研究領域の現状 233

栗 原 顕 輔 (特任准教授 (岡崎オリオンプロジェクト) ) (2014 年 5 月 1 日着任)

A -1) 専門領域:界面化学,超分子化学

A -2) 研究課題:

a) 交差触媒系を内包するベシクル型人工細胞の創成 b) 増殖に最適な組成選択を行うベシクル系の構築 c) 遺伝子型と表現型が内在する人工細胞の構築

A -3) 研究活動の概略と主な成果

a) これまで外部より添加していた両親媒性触媒分子を,ベシクル膜という疎水場を利用して合成する。この触媒分子 はベシクル自己生産において,膜合成を触媒するので,シグモイド的にベシクルが生産されると予測できる。膜分子 の合成と触媒の合成は連動しており,膜内で触媒分子が増えすぎるとベシクル膜が不安定化してベシクルは崩壊す るが,一方ベシクルが分裂して増えすぎると,触媒分子生産が追いつかず膜内の触媒濃度が下がり,ベシクルの生 成速度は減少する。この二つの生産系が,ある点に収束すれば,より堅牢でしなやかな人工細胞が誕生すると期待 できる。これまで,膜分子と内部で合成可能な触媒分子の前駆体を合成し,実際にベシクル内部で触媒が合成され, ベシクルが増殖する過程が確認できた。

b) 現在の人工細胞系の膜分子,およびその前駆体は1種類に限られていた。ベシクルにあえて異種の膜分子前駆体を 添加し,ベシクル自己生産ダイナミクスを見守る。この摂動により,ベシクル生産系が消滅する場合もあろうが,や がて混合脂質系で,より堅牢に自己生産し続けるベシクルが現れる場合もあろう。このようなベシクルの多様性は, 生命起源が自己複製する脂質膜から誕生したとするリピッドワールド仮説を支持するものである。現在,2種類の脂 質からなるベシクル系が共存した際に,ベシクル膜を構成する脂質が化学反応により交換することを確認している。 c) 現在,鎖長を変えた鋳型 D N A を内部に封入し,その自己増幅過程を観察している。その中で,D N Aの鎖長に応じ てベシクルの自己生産ダイナミクスが異なることを既に見出した。長い D N A (1164 bp)ではベシクルが自己生産す るが,鎖長が短い D N A (374 bp)を内包するベシクルは,小さいベシクルを内部に形成し個数は増加しない。ベシ クル内の D N Aの摂動はベシクル融合法で起こすことが可能であり,その中で,より自己生産に特化した D N Aの混 合比などが見つかれば,遺伝子型と表現型とが相関をもつ人工細胞が創出すると期待される。

B -1) 学術論文

S. K. TAKAKURA, T. YAMAMOTO, K. KURIHARA, T. TOYOTA, K. OHNUMA and T. SUGAWARA, “Spontaneous

Transformation from Micelle to Vesicle Associated with Sequential Conversions of Comprising Amphiphiles within Assemblies,” Chem. Commun. 50, 2190–2192 (2014).

B -3) 総説,著書

菅原 正,鈴木健太郎,栗原顕輔,豊田太郎 , 「分子システムとしてつくる人工細胞」, 豊田研究報告 67, 63–70 (2014).

(2)

234 研究領域の現状 B -4) 招待講演

K. KURIHARA, “A Constructive Approach to Artificial Cell,” The 7th Korea-Japan Seminars on Biomolecular Sciences: Experiments and Simulations, Seoul (Korea), November 2014.

C ) 研究活動の課題と展望

本研究では,構成的アプローチをもとに既知の分子から「生命らしい」機能や挙動を示す物質を創成することを目的としている。 最も単純であろう原始細胞には,情報物質の自己複製および境界膜の自己生産(外部から取り込んだ養分を自分の構成物質 に変換して個体を増殖すること)の2つのダイナミクスが必要であり,いずれも触媒系を介して行われていたと考えられている。 現在のベシクル型人工細胞モデルでは,膜分子生産を触媒する分子システムは実現されておらず,触媒能が低下し数世代 しか増殖できない。我々は境界の生産系と触媒の生産系の連動性に着目し,ベシクル膜を触媒場とする交差触媒系を導入 した新規の人工細胞システムを構想した。本システムは触媒生産系を内包することで,ベシクル内で触媒分子が過剰に生産 されると相対的に膜分子が減少し,ベシクルが崩壊して新しいベシクルが再構築することが予想される。よって従来のよう に増殖に伴いベシクルの情報(サイズ,組成など)が発散していくのではなく,生産と再構築を繰り返すことで,触媒と膜の 生産のバランスが取れた人工細胞のみが存続していくことも期待できる。

参照

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